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「じゃあ、おやすみ〜」
布団に入って、目を閉じると、いつのまにかそこは宇宙空間。
「ここはどこだ?」
周りには、たくさんの惑星がある。
前にも、横にも後ろにも、360度宇宙が広がっている。
「ああ、これは夢だな」
と思った途端、妙にハイテンションな男の声が聞こえた。
「ヨウコソーーー!!イラシャイマセね〜〜〜!!」
「??」
周りを見回しても誰も見えなかったが、
なんとヤツは上から降ってきた。
「アチョーーー!! ヤッ!!」
かなり高速で飛んできて、着地(?)して、
(宇宙だから地はないんだけど・・)
変なポーズを決めた。
うまく決まったらしい。なんだか得意気だ。
緑色のスーツみたいなのを着て、 あちこちに派手なバッチをつけて、
シルクハットをかぶって、ピエロみたいなお面をかぶってる。
明らかにおかしい。でもまぁ夢だし、
これもありかな、とか思ってると、
「スペースバンクへ、ヨウコソ!!」と、
彼は回転ジャンプしながら言った。
「はぁ?」
気付くと、すぐ後ろにとてつもなくでっかい建物があった。
神殿みたいな作りなんだけど、カラフルなライトがピカピカしてて、
センスがいいのか悪いのかよく分からない。
「中へドウゾ〜〜〜」
案内されるままに、入り口から建物の中へ入っていった。
コツコツ足音が響く。
そしてドアを開けると、その中はなんだか華やかな色彩の
ホールみたいなところで、
意味のわからない機械がたくさん並んでいる。
「・・で、これはなんですかね?」
と俺は冷静に聞いてみた。
「ココはスペースバンクでぇぇーーっす!!」
「バンク・・ってことは銀行??」
「イェエエエーーーッス!!!」
「おれはなんでここに来たのかな?」
「シリマッセン!!!」
ちょっとこけそうになった。そうか、ヤツも知らないのか。
まぁいいや、夢だし。
「セッカク、スペースバンクに来たンデスカラ、
チョットゆっくりシテイッタラ、ドウですか?」
「そうだな。ま、せっかく来たし・・」
そう言って、しばらく俺はなぜかヤツと見つめ合った。
沈黙・・。
するとヤツがぼそっと言った。
「アナタ借金イッパイデスね」
「ええぇっ?!」
「27,490,864,907Э・・」
「そのわけのわからない単位はなんだ??
ってかその前に俺、借金とかしてないし!!」
「アナタ何もシラナイデスね」
「し、知らないなぁ、ああ、知らないともさ!!」
夢だと言うのにちょっと動揺してしまった俺は、
心なしか強気になってしまった。逆ギレ?
「デハアナタに説明イタシマス」
そいつはいきなり変な丁寧口調になった。
なんだ?仕事モードか?
「アナタまず生まれたトキ、
肉体借りるタメに借金シマシタ。12,305Э」
「はぁ?? 肉体??」
「ソレカラ、タクサン借金し始めマシタ。特にオオキカッタのは・・、
五歳の時、クリスマスのプレゼントに
絶対ガンダムのゲーム欲しいッテ、イイマシタネ。
ソノ時、6,127Эの借金。
次の年ハ、プレゼント何でもイイって言ったカラ、
借金はナシでしたネ」
「欲しいって言ったら、借金になるの??」
「七歳ノ時に、オバアチャンに肩タタキシマシタね、
これでガンダムの分は借金返済デキテマス」
「いいことしたら借金返済になるってわけ?」
「高校受験、絶対受カリタイって神社二お参りシマシタね」
「そりゃするでしょう、普通。絶対受かりますようにって」
「ソレデ8,992Эノ借金デス」
「はぁ??願っちゃだめなの?!」
「望むノハ無料デス。デモ、求めたら借金にナリマス」
「俺、借金したから受かったの?」
「ソウデス」
「求めよ、さらば与えられんって言うじゃん?!
求めるから夢は実現するんだろ!」
「ハイ、求めれば、与エラレマス。
デモ借金多すぎタラ、願いごとは却下サレるコトもアリマス」
「えぇぇ・・」
「求めて得た成功もお金も名誉も、高額ナ借金になるのデスヨ」
「どうやったら、借金返済できるわけ?
あ、いいことするんだっけ? 無償の奉仕ってやつ?」
「ハイ。他人に迷惑をカケズ、
喜びと感謝のココロで生きていくダケデモ返済デキマス」
「へー・・」
「掃除をシタリ、人や動物や植物を大事にスルコトモ
返済にナリマス」
「なるほどねー」
「借金返済を続けておこなって頂いた際ニハ、
コチラカラ、サービスを差し上げるコトもアリマス」
「サービスって? あ、もしかして、
求めてないのに、与えられたときってサービスなの?」
「ソウデス。求めタラ借金にナリマスが、求めていなくて
ただ"望んでる"場合、その物や出来事を差し上げるという
サービスをすることがアリマス」
「求めずに望むっていうの、難しいな」
「ホシイけどナクテモ幸せと思えて、
楽しい気分で夢見るコトが"望む"とイウコトデス。
ドウシテモ手に入れたいト思って、
手に入れられないと不幸にナルヨウナ状態は
"求めている"コトにナリマス」
「なるほどね〜。俺、野球選手になりたいって夢見てたけど、
あれは、ほわわんって思い浮かべるだけの幸せな夢だったもんな〜。
でも、受験の時は、
絶対に何がなんでも受からなきゃ!!って思ってたからな〜。
この高校じゃなきゃ嫌だ!!って思ってたからな〜」
「求めナクテモ、アナタにトッテ、一番最適な高校が
選ばれるコトニなってマシタヨ」
「そうなんだ?!
あの高校じゃなくても別によかったんだ?」
「ソウデス。心配シナクテモ、
一番最適な物が与えられるようにナッテいるンデスヨ」
「求めずに、ただ与えられたものに素直に従っていけばよかったのか・・」
「借金があまりに高額にナリスギルト、
強制的に返済してモラウコトニなりますヨ」
「え・・」
「失敗や挫折、苦労、悲しみ、事故、病気など与えますヨ」
「げ〜っ」
「ソレ乗り越えると借金大きく返済デキマス。
しかも感謝のココロにナルカラ、預金もデキるチャンスデス」
「借金がゼロになれば、預金も出来るってわけね。
あ、預金たくさん貯まったらどうなるの??
ね、宝くじでも当てさせてくれるの?!」
「私タチ、スペースバンクの社員みんなでパーティーするんデス♪」
「はぁっ???じゃ、俺関係ないんじゃん!」
「預金タクサン貯めてくれるコト、
ワタシタチにとって、この上ないヨロコビ。
ダカラ、ワタシタチ、嬉しくてパーティーシマス」
「そうなんだ・・。
で、預金してくれた人にはサービスとかは・・??」
「ソレモ、モチロンしますヨ」
「そっか、よかった。
っていうか、それにしてもさー、
成功するってあんまりいいことじゃなかったのね」
「ソレハ違いますヨ。成功するコトは悪いコトじゃないですヨ」
「へ? だって借金増やしちゃうってことなんでしょ?」
「求めずに、望めばいいんですヨ。
望みをもったまま、
借金返済ガンバッタリ、預金を増やしてればジキに成功デキマス。
求めて成功したとシテモ、
謙虚なココロで、世の中のタメに役立てば、
ドンドン借金返済デキマス。
大きく成功すると、高額返済もしやすくナリマス」
「そっかー・・。成功自体は悪いことじゃないんだな、よかった。
感謝の心持ってるだけで借金返済できるなんてラッキーだな。
心がけてみよっかな。
借金させてもらったおかげで今の高校にも行けたし、
部長にもなれたんだろうしね」
「ソウデス。
大きな怪我でプロ野球選手にはなれなくなったケド、
あの時アナタ大きく借金返済シマシタヨ」
「・・・あの時は死ぬほど辛かったね。泣きまくったし・・。
人生の終わりだと思った・・。
でも、あの怪我がきっかけで今の彼女と付き合えたし、
学んだことたくさんあったしな。
良かったって思ってる、マジで」
「今またアナタ、借金返済できましたヨ。
27,490,861,025Эにナリマシタ。オメデトウゴザイマス」
「あぁ〜? どんだけ減ったかわかんねーけどよ・・。
ま、でも色々分かったよ。
ありがとな」
「コチラコソ、アリガトウゴザイマシタ!
いつでもまたおこしクダサイ。
アチョーーー!! トゥッッ!!!」
ヤツは天井つきぬけて飛んでいった・・と思ったら、
そこにはもう天井はなく、大きな宇宙が広がっていた。
そして気付くと、俺はベッドの中。窓から朝の光が差し込んでいる。
「・・スペースバンクか」
寝たまんま大きくのびをして、えいっと起き上がった。
窓を開けて、さわやかな風を思いきり受けた。
目を閉じて、息を大きく吸い込んだ。
エネルギーが体いっぱいにみなぎっていくのを感じた。
息を吐きながら、しっかり目を開いてまっすぐ前を見た。
情熱が湧き上がってくる。胸が熱い。
心の中で俺は叫んだ。
「借金はやく返済して、いっぱい預金してやるぞーー!!!」
これからは何も求めず、与えられたものを素直に受け止めて、
感謝して、思いきりそれを楽しんで、
そして大事に味わって生きていく。
希望を持って夢を見よう。楽しい気分で夢を見よう。
叶っても最高。叶わなくても、きっと幸せ。
そんな心の余裕を持って、
毎日楽しく、幸せに生きていきたい。
これから先、何が起こっても、何が与えられても、
それは俺にとって、最適なことなんだよな。
じゃ、気楽にいこ。すべてお任せコースで、
鼻歌でも歌いながら夢見て生きてこう。
今、手にしてるもの、目の前にあるものが、
俺にとって最善だと判断されて与えられてきたものたちなんだ。
結構いろんなもの手にしてるんだな、俺って・・。
恵まれてるかも、かなり。
なんともいえない幸せな気持ちが、心いっぱいに広がった。
感謝の心で体がしびれそうになった。
目を閉じて、その感覚を味わった。
「借金返済アリガトウゴザイマーース!!!」
アイツのハイテンションな声が、どこかからかすかに聞こえた気がした。
(2006.2作)
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